SAPを中心とした基幹システムのデータを集約し、全社員に経営情報をレポートする

毎日数十万件のデータを処理して全社員にレポートする経営情報基盤を支えるのはTalend Enterprise Data Integrasion
前回のプロジェクトでは、データ統合についての開発は約1年かかっていたが、わずか2ヶ月で実装を終えてTalendの開発効率の高さに驚きました。
生産技術本部 生産システム部 情報システム課, 江原 麻由

はじめに

三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(以下MDIS)は、三菱電機グループのITビジネスを担う中核企業で、基幹業務システムのコンサルテーション、インテグレーション、導入、運用を様々な業種業態の企業に提供して

いる。また、MDISは、三菱電機情報技術総合研究所、デザイン研究所、先端技術総合研究所という基礎研究からビジ ネスに近い研究を行なっている研究機関と緊密に連携して、お客様の立場にたった「One Stop SIer」としてビジネ スを推進している。さらに、お客様から高い信頼を得ているMDISがお客様に提案する製品や技術は、自社内での利 用や検証を積極的に実施している。生産技術本部 生産システム部 情報システム課の村上隆二郎氏は「、お客様 に提案する製品や技術を自社内で利用していることは強みになるし、自信を持って提案できる」と言う。  今回、MDISは原価計画システム、資材購買システム、プロジェクト管理システムなど複数のシステムで生成される データを統合し、社員全員が最新のビジネスの状況を把握することができる経営情報基盤システムのインフラを 刷新してデータを整備した。 Talend Enterprise Data Integrationは経営情報基盤システムの中核となるデータ統合インフラとして採用している。

以下に、MDISのデータ統合インフラの概要と推進したプロジェクトについてご紹介する。

経営情報基盤システム

経営情報基盤システムは、SAP ERPの営業、資材、財務モジュール、NT Tデータイントラマート社製品で開発した資材購買システム、特定の製品を使わずに自社開発した原価計画システム、プロジェクト管理システムなどの基幹システムから日次バッチ処理で更新データを抽出し、事業部、スタッフ部門で利用する統合データベースの内容を最新の状態にしている。

経営情報基盤システムは統合データベースからパワーユーザーにはExcelなどで二次加工するための営業、原価、購買データを定型のCSV形式で提供している。一般ユーザーはSQLServer2014ReportingServicesの機能を利用して、自部門の業務で活用できるレポートを部門別、年度別などの検索条件を指定して抽出している。MDIS社内では毎日約2,000人以上の社員のアクセスがあり、特に原価関連のデータ抽出/レポートは約600人が利用している。

経営情報基盤システムの刷新プロジェクト

本プロジェクトではWindows2003Serverの保守期限切れに伴い、老朽化していた経営情報基盤システムのハ ドウェア、ソフトウェア、ミドルウェアなどのシステムのインフラを刷新することにした。また、経営情報基盤システム が提供しているレポートに対する新たなユーザ要望に速やかに応えるため、特にデータ統合インフラは処理性能も 重視した柔軟な仕組みを目指した。

ユーザ目線で見ると改善点は少ないが、日次バッチの処理時間の大幅な短縮や今後のデータ量の増加、仕様変 更などに対応するための重要な取り組みであった。

データ統合インフラを支えるTalend製品

経営情報基盤システムでは各システムからデータを抽出・統合するために、Talend Studioを使って設計している。データ抽出、データ統合はTalendでジョブと呼んでいるJavaプログラムを実行する。本プロジェクトでは130のジョブを開発し、その中でも80のジョブはジョブスケジュールに従って日次バッチで自動実行し、基幹システムから収集した数十万件の変更データを経営情報基盤のデータベースに反映している。

Talendで開発したジョブは各システムから抽出・統合したデータを100のDBテーブルと30のビューに変換している。村上氏は「本プロジェクトではエンドユーザーからの見え方に注目してレポート指向でビューを作ったのでレポートの種類と同数のビューを用意した」という。

レポートは資材購買情報、営業情報、原価計画情報に分 類され、各々約 10種類のレポートがあり、全てのレポートを社員がブラウザ上で検索する ことができる。パワーユーザーはプロジェクトマネージャーのように様々 なデータを利用して分析する必要があるため、定 型のレポート以 外にも EXCELで加工できるように必要なデータをファイルでも提供している。

Talendを選択した決め手は Talend Studio

本プロジェクトで利用する製品は、機能コンポーネントの組み合わせで 評価した。機能コンポーネントとしては、データ統 合、データベース、ビジ ネスインテリジェンスツール(BIツール)の3つとした。機能コンポーネント単位で評価しなかった理由を、村上氏は「各機能コンポーネントにはBIの要素、データベースの要素、データ統合の要素が少しずつ搭載されていて、一概に製品毎に機能だけを比較しても、実現可能な部分と不可能な部分が複雑になるため、組み合わせを作った方が適切に評価できると判断した」という。

デー タ 統 合 ツ ール はTalend以 外に3製 品、デ ー タベ ース は3製 品、BIツールは2製品を評価した。4×3×2の全ての組み合わせではなく6つのパターンに絞って比較検討した。検討したポイントは、①データ統合としての機能(特に自社基 幹システムであるSAPシステムとの 接続 性)、② 分析機能、③権限管理、④導入容易性、⑤導入費用の5項目である。生産技術本部生 産システム部 情 報システム課の江 原 麻由氏は「検 討ポイントの中で、本プロジェクトではデータ統合機能と導入費用を特に重視した」という。データ統 合ツールの基 本的な機能としてはPC上で動作するEclipseで記述された設計ツールTalend Studioの評価が高かった。

元々 SAPやNT TデータイントラマートのシステムでEclipseを使っていたので 使 い 勝 手がよく親 和 性 が 高かったのと、Talend Studioでは 設 計時に生成されたJavaプログラムがリアルタイムで見ることができるため、Javaに精通しているエンジニアからすれば簡単に使えてデバッグも容易で安心感があった。

Talend、SQL Server2014 Database、SQL Server2014 ReportingServices、ConnectPlusETという製品選定後にプロジェクトがスタートした。本プロジェクトは要件定 義と設 計で4 ヶ月、Talendなどを使った 実 装で2 ヶ月、テストと試使用・並行稼働で4 ヶ月となり、全体で10 ヶ月間のプロジェクトとなった。

本プロジェクトに参加した江原氏と村上氏は前回のシステム開発にも携わっ ていたため、本プロジェクトが非常に短期間で遂行できたことに驚いている。  江原氏は「前回のプロジェクトでは、データ統合についての開発は約1 年かかっていたが、わずか2 ヶ月で実装を終えてTalendの開発効率の高さに驚きました」と言う。 村上氏は「エンドユーザーから見たレポートレイアウトに大きな変更を加 えたくなかったので、テーブルやビューの設計を全面的に見直したため設 計には時間を要したが、実装期間は短縮できた」と言う。

また、このようなプロジェクトは立ち上がりに時間がかかるものだが今 回はスムーズだった。オープンソース版のTalend Open Studioと商用版の Talend Enterprise Data Integrationについて、江原氏は「Talend Open Studioを使ってプログラム開発を進めて機能や実装方法について一通り試せたことが良かった。Talend Enterprise Data Integrationの商用版機 能であるチーム開発、権限管理、バージョン管理などの機能を今後は積極 的に使っていきたい」と締めた。

今後の予定

今後もレポートの拡充が予定されているため、レポートの種類と同数の ビューを開発するために、引続きTalendの活用は進んでいく。また、村上氏は「本プロジェクトでTalend製品が使い易く、プロジェクトのQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)に有効であることが分かったので、次に予定されている新システムにおいても積極的に使う予定です」と言い、江原氏は「経営情報基盤の開発が終わり、Talendの利用方法や効果が理解 できたので、外販へ向けて事業部への支援を進めて行きたい」と言う。  

本プロジェクトに参加したメンバーは、Talendの導入事例を技術ノートにまとめ、社内で定期的に開催している技術発表会などで成果を発表し、営業部門がお客様へ提案する際の資料のレビューやアドバイスを積極的に実施していく予定だ。